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誇り高きアニメ国家として世界中でも有名な日本ですが、アニメを語るなら絶対に忘れてはならない圧倒的な存在がいます。宮崎駿監督率いるスタジオジブリです。僕はまさにジブリ世代とも言えるくらい子供時代はどっぷりジブリに浸かって育った人間なので数々の感動は棺桶まで持っていく覚悟でいます。初恋の相手はシータでした。トトロを信じて近所の森でわざと迷子になったこともあるくらい。

もはや国民の90%近くまで認知度があるだろうジブリの作品は、日本のアニメ文化の土台を作った言わばアニメの母的な存在です。それこそアニメというもの自体、昔は子供が見る稚拙なものという偏見に溢れていました。ちなみに海外では今でもこういう見方は普通です。ここ最近ようやく日本のアニメが小説や映画のようなエンタメとしての地位を確立してきたように思えますが、そこに至るまでは長い年月がかかったわけです。

知っていると見たことがある、その間にある溝は大きく、それこそガンダムやドラゴンボールなど超有名なアニメは他にも沢山ありますが、知ってるだけで見たことがない人は案外たくさんいるのではないでしょうか。僕はガンダムを見たことがありません。それに対してジブリの作品を一つも見たことがない、という人は少ないんじゃないかなと思います。

作品の知名度を広げるためには、まず一部のファンしかつかないジャンル限定の枠を超えないといけません。コアなSF作品は国民的に愛されることは絶対ないし、ミステリーやホラーも広く知られるという観点からは遠くなります。これはアニメに限ったことではなく全てのエンタメにも言えることです。小説も映画もドラマも全て同じです。とにかく国民的に愛されるためにはジャンルの指定をまず飛び越える必要があるわけですね。

じゃあジャンルなんて指定しないで大衆受けしそうな作品にすればいいじゃん、という声がどこからともなく聞こえてきそうですが、実はこれがくっそ難しいのですよ。ジャンルを指定しないってことは裏を返せばテーマが薄くなるし、当たり障りない作品にしようとすると中身がぺらぺらになる。ターゲットを絞ればそれだけ専門的なことを描けるのに対して、万人受しようとすると万人から嫌われない作品にしないといけません。

作品作りにおいてはこのバランスが何よりも難しく、作り手の才能が問われるポイントでもあるわけですが、その両方をやってのけたのがジブリだったというだけのことなのです。より多くの人に見てもらえるテーマで、かつ内容の濃い独自性のある作品を次々に生み出した。だからこそジブリはアニメという業界だけでなく、あらゆるエンタメの中でも不動の地位を獲得したわけです。

 

ルパン三世のカリオストロの城ってジブリ作なの知ってた?


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これは意外と知らない人もいるかと思う。ジブリはかなり初期の頃にルパンの映画を作ってるんですが、これがくっそ面白い。大人になった今見ても腹抱えて笑えるシーンがあったり、涙を誘うシーンがあったり、一つ一つの場面に夢がつまってます。本当に何度も観れちゃう。子供の頃は純粋にただの一消費者という視点からしか見てませんでしたが、今になって見返すと至る所に「面白い工夫」が施されているのが分かる。たまたま名作ができちゃったんじゃなくて、基本がしっかりしてる。ジブリは他の全ての作品を通してですが、物語の土台、いわゆるプロットと呼ばれる骨格が巨人化したエレンが本気で蹴っ飛ばしてもビクともしないくらい強固なんですよ。

例えばそれはキャラの配置だったり、それぞれの役割分担だったり。作る側に無理やり動かされているのではなく、ちゃんと見る側が望んでる分だけ演じてくれてる点とか。基本的にはルパンが主軸で動いていくけど、本来はその敵である銭形のとっつあんが一時的に仲間になって敵と戦うとか、まさに視聴者が見たい展開です。いつもは敵のやつが見方になるという展開はけっこう他でも使われてます。映画の時だけ優しくなるジャイアンとかね。典型だわあれ。

次元や五右衛門はサブキャラとして必要以上に活躍しないし、不二子も控えめ。ルパンの映画だけど、焦点はあくまで主人公であるルパンと今作のヒロインであるクラリスにだけ絞ってる点とか。全員を活躍させようとしても尺が足りなかったりカオスな状態になったり、キャラの動かし方って実はけっこう難しいんです。登場人物の人数もほどよく、メインキャラは7人程度。おそらくこれが一般的なユーザーが許容できる役者数かと思われます。

メインキャラが8人以上とかになると2時間の映画じゃ全然使いこなせません。それこそ連続ドラマとか2シーズンアニメとかにしないと捨てキャラだらけになる。作る側がこのキャラをもっと使いたいとかはユーザーからしたら知ったこっちゃない。それで面白ければ文句ないけど、つまらなくなるなら作り手の自己満足になってしまいます。その辺のバランスがジブリは絶妙なんですよね。必要最低限で、十分すぎる効果を発揮するところはまさに神業。

どんでん返しがあるわけでも最後に隠された謎が明らかになるわけでもないのに目が離せない。それはキャラクターの魅力だったり脚本構成が優れているからでしょう。視聴者をぐんぐん前へ引っ張る力があります。その点ではラピュタもこの類の名作かもしれない。今でもラピュタに匹敵するボーイミーツガールはそうそう無いんじゃないかな。

 

世界観が独特すぎて誰も真似できない千と千尋の神隠し


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もうこれは誰でも知ってますね。文句のつけようがない名作です。主題は少女が未知の世界に迷い込むという典型的な異世界転生。にも関わらず、未だかつてこれほどまでに斬新で独創的な世界観を描き切った作品が他にあっただろうか。少なくとも僕は知りません。千と千尋を見たのは小学生の時でしたが、あの時の衝撃は凄まじかったのをはっきりと覚えています。そして今こうして大人の視点から見ると、子供の頃には気がつかなかった真髄の部分が見えきたりもして、それってつまり子供の視点から見ても大人の視点から見ても、それぞれ別の楽しみがあるということですよね。老若男女に受け入れられる異世界転生ものなんて、他にあるでしょうか。

近年はコンテンツの過剰供給に伴って、内容の類似が甚だしい状況です。特に異世界転生ものなんて、これほど使い古されたテーマもないかと思います。だいたいどれも同じじゃないですか。展開もありきたりだし、そもそも世界観なんてみんな共通。主題が同じである以上、バックグラウンドとして作品を支える世界観だけは他のどれとも酷似しない作品にしなければつまらないのは当然です。その点に関して、やはり千と千尋は未だに不動の地位を確立しているんじゃないかなと思います。誰も真似しないのは真似できないくらい圧倒的だからなわけです。

キャラクターを生かすも殺すも、背景にある世界観が重要な役割を担っているのは言うまでもありません。世界観が陳腐な盤上でいくら必死に駒を動かしてみても絶対に魅力的な作品にはならない。キャラクターだけで押し切れる作品が無いわけではないけど、それもごく稀です。そもそもキャラ作品ってのは視聴者側も多くを求めていない。しっかりと腰を据えて見るような作品とはまた違ったジャンルなわけです。世界観ってのはある意味ルール作りで、その世界がどういう秩序の下成り立っているのか、混沌としてるなら何が原因でそうなっているのか、そこで暮らす人々に根付いている価値観は何か、その世界で生きていくには何をどうしなければいけないか、そういう細かなルール作りはプロット作りにおいては血反吐はくくらい最も大変なプロセスです。キャラは案外後からついてくるものだけど、世界観ばっかりは思考の繰り返しの先にしか降りてこないですから。

 

ナウシカやもののけ姫は作品の主題に強いメッセージ性がある


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ジブリの作品全般に言えることですが、どれも作品の中に強いメッセージ性を含んでいます。特にこの二つに関してはそれが顕著で、宮崎駿監督が心の奥深くで最も思考を繰り返しているテーマなのでしょう。人間がいかにして自然と向き合っていくか、人間の過ちや愚かさを主軸に、登場人物たちがどう世界と向き合っていくのか。一つの作品を通して、人間とはどうあるべきなのかを各々の心に問いかけるような、そんなメッセージが含まれている。ラピュタにしても千と千尋にしても、人間が奪ってきたものや壊してきたものの視点が必ず登場します。宮崎駿監督ほど人間主義という視点から離れて客観的に世界と向き合っている人はいないんじゃないかなと。

そういうメッセージ性の強さが作品を見終わった後も余韻として残り、また見たいなという気持ちにさせてくれるのでしょう。僕自身もジブリの作品はそれぞれ5回〜10回以上見ています。それでもやっぱりまた見たくなるし、こういう中毒性って他のアニメでは味わったことがないので、やっぱり圧倒的だなと畏敬の念を感じずにはいられません。ジブリから学べることは、ものすごく沢山あります。それは単なる消費者の目線からでも、物語を創作する側の目線からでも、それぞれ違った学びがあってまるで人生の教科書を見ているかのような気持ちになるんですよね。

あぁやっぱすごいわジブリ。老若男女問わずにファンを持っているというのは、つまりそれだけ人の心を動かしてるってわけですから。音楽もすごいしさ。あとジブリは本当に冒頭のシーン作りが上手いんですよ。もののけ姫にしてもラピュタにしても、物語の導入部分で思いっきり引っ張られるあの感じ。アシタカVS祟り神とか今でも夢に出てきそうなくらい衝撃だった。シータが飛行機から落ちる時も目が釘ずけになった。ナウシカがグライダーで空を自由に飛び回る姿にも虜になった。千と千尋であの神曲が流れた瞬間おしっこちびりそうだった。全てにおいて完璧。宮崎駿監督が引退してこれからどうなっていくんだろう。期待と不安で夜も眠れません。

 

というわけで以上、長くなるのでこの辺にしておきます。片っ端から色んなアニメ見たり映画見たりしてますが、やっぱり基本に忠実な作品は面白いです。基本をしっかりと固めた上に独創的な世界観という風呂敷を広げ、その盤上で魅力的なキャラクターたちが動き回る。これさえ頭に入れておけば楽しい作品になるんじゃないかなと。面白いとは何なのかを突き詰めるなら、ジブリを片っ端から見ていくと良いでしょう。ではでは、また。